2009年03月17日

第一章第58回


 仕事のことは、ナオもユウカも

 聞きずらかった。

 少し間を置いてから

 サトシは自分で話し始めた。

 「仕事はとてもきつい」

 サトシは今の仕事について

 少しずつ話してくれた。

 郊外の自動車部品工場で

 働いていること。

 朝晩交代制で夜勤の日もあること。

 残業の日もあり、肉体的にたいへん

 きついことなどだ。

 「そうなの。たいへんだね」

 ナオとユウカはサトシの仕事の

 きつさを知り、それ以上の言葉を

 かけるのをためらった。

 「それでも地方から出稼ぎに来てる

 派遣の同僚よりはましさ」

 サトシは地方から出てきて

 寮に入っている人たちの

 話をし始めた。

 続く。

 しばらく更新を休んで、すいませんでした。

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Posted by 蘭  at 12:51

2009年03月12日

第一章第57回


 ドアが開いてすきまから

 サトシの顔が見えた。

 「久しぶり」

 ナオが声をかけた。

 「えっ、ホントかよ」

 サトシは本当にビックリ

 していた。

 「サトシ先輩、お久しぶりです」

 ユウカも声をかけた。

 「へ~、二人で来たんだ。

 まあ、あがれよ」

 サトシは部屋の中へとおしてくれた。

 部屋は6畳とキッチンで

 狭い部屋だった。

 「狭くてわるいな」

 サトシは照れくさそうな顔をした。

 「どうしたの、きょうは」

 「うん、懐かしくなって。どうしてるかな~

 と思ってきたんです」

 ナオはサトシの顔を懐かしい

 思いで見つめながら言った。

 「最近どうしてますか?」

 ユウカが聞いた。

 「う~ん、どうって言われてもなあ」

 明るかったサトシの顔が心なしか

 くもったような気がしたナオだった。

 続く。

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Posted by 蘭  at 13:36

2009年03月10日

第一章第56回


 サトシのアパートが見えてきた。

 古ぼけた安アパートだった。

 どうやら風呂もついてなさそうだ。

 ナオとユウウカはおそるおそる

 仲へ入っていった。

 玄関の下駄箱すら共同という

 昔ながらのアパートだ。

 郵便受けの名前からサトシは

 102号室だとわかった。

 2人は廊下を歩いた。

 サトシの部屋の前に立った。

 「行こうか」

 ドアをノックするのに、

 ユウキがいった。

 今日は日曜日だ。

 サトシはいるはずだと

 ナオは思った。

 思い切ってドアを

 ノックしてのは、

 ナオの方だ。

 「ごめんください」

 声をかけると、中から

 返事がした。

 「は~い」

 なつかしいサトシの声だ。

 続く。

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Posted by 蘭  at 14:34

2009年03月07日

第一章第55回

 
 数日後、ナオとユウカは宮下公園

 で待ち合わせをした。

 行方がはっきりわかっているのは、

 サトシだけだった。

 ヒロシにいたっては街を

 さまよっているので、

 今どこにいるのかさえ

 わからない有様だった。

 サトシは親元を離れて

 アパートで一人暮らしを

 しているとのことだ。

 サトシは学芸大学駅の近く

 に住んでいるとうので、2人は

 東横線に乗った。

 ドラッグのことなどで遠くなって

 いたユウカとの距離が、ユウカの

 彼氏の死で再び近ずいたような

 気がしてナオはちょっぴり

 うれしかった。

 しかしユウカは彼氏の死から、

 まだ十分には立ち直れて

 いない様子だった。

 東横線の電車は学芸大学駅

 に着いた。

 サトシのアパートは駅の東口から

 5分ほどだといいことだった。

 2人はゆっくり歩きだした。

 続く。

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Posted by 蘭  at 12:44

2009年03月06日

第一章54回


 ユウカはナオがよく知っていた男子たちの

 近況を話してくれた。

 ヒロシは派遣からプータローになって、

 渋谷の街をさまよっている。

 タカは派遣をクビになって

 ネットカフェ難民だ。

 サトシは工場で働いているが、

 かんりきつい仕事らしい。

 ナオは驚いた。

 学生時代は明るい笑顔が

 印象的な男子たちが今は

 そんな境遇なのか。

 卒業した者も中退した者も

 いるけれど、みんな幸せな

 青春はおくっていなかった。

 ナオはショックだった。

 レイコだけでなく、彼らにも

 会いたいと思った。

 「ねえユウカ。今度男子の誰かに

 会いにいかない?」

 「うん、そうだね」

 ユウカも同行することに

 異存はないようだった。

 続く。


  
Posted by 蘭  at 14:20

2009年03月04日

第一章第53回

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 ナオとユウカは帰宅することにした。

 「ホントに今日は楽しかったよ」

 レイコは笑顔で見送ってくれた。

 「また会おうね」

 「うん」

 ナオはレイコが少し元気を

 取り戻したのが、たまらなく

 うれしかった。

 帰り道、ユウカといろいろな

 ことを話し合った。

 「ねえユウカ、レイコ前より

 元気になったと思わない?」

 「うん、思う思う。よかったよね~」

 ユウカもうれしそうだった。

 彼氏が亡くなってから

 初めて笑顔を見せ、元気を

 取りもどした様子だった。

 「ねえ、ナオ。タカたち3人のこと

 覚えてる?」

 「もちろん覚えてるよ」

 「3人が今どうしてるか、知ってる?」

 「う~ん、ちょっとわかんない」

 「あたしは知ってるよ」

 ユウカは3人の現在の境遇を

 ナオに語り始めた。

 続く。

 次回をお楽しみに♪  
Posted by 蘭  at 12:59

2009年03月02日

第一章第52回

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 ナオとレイコ、ユウカの3人は長い時間

 いろいろなことを語りあった。

 中学時代のこと、高校に進学してからのこと。

 カラオケボックスで遊んだこと。

 音楽のこと、映画のこと。

 付き合った彼氏のこと。

 恋愛話が1番長くなった。

 化粧品のこと、グルメのこと。

 ダイエットのこと。

 女の子が3人よると、

 話題がつきなかった。

 時間はあっという間に

 過ぎていった。

 恋のことと、食べ物のこと

 については特に

 話がはずんだ。

 レイコが精神的に安定してきて

 良かったな、とナオは思った。
 
 続く。  
Posted by 蘭  at 14:07

2009年02月27日

第一章第51回

 
 レイコの傷が増えていないことで、

 ナオは安心した。

 でもなぜ傷が増えていないの

 だろうか?

 ナオは自問自答した。

 レイコはナオの顔を見て

 イタズラっぽく笑った。

 「この前ナオちゃんが来て

 くれてから、とても気持ちが

 落ち着いたの」

 だからそれ以降リストカットは

 していないのだ、とレイコは

 教えてくれた。

 そうか、自分のような者でも

 人のお役に立てるんだ。

 ナオはレイコの役に立てたことを

 とてもうれしく思った。

 終始浮かない表情だったユウカが

 少し表情が和らいだ。

 「ナオ、いいことしたね」

 ユウカの顔に初めてわずかな

 微笑みが浮かんだ。

 3人はちょっぴり幸せな気分に

 なることができた。

 続く。

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Posted by 蘭  at 14:37

2009年02月26日

第一章第50回


 レイコの手首のキズは

 よく見えなかった。

 2階のレイコの部屋へと

 上がり、3人はくつろいだ

 雰囲気になった。

 「ユウカとは久しぶりだね」

 レイコはユウカに声を

 かけた。

 「うん、そうだね」

 「ユウカの彼氏、亡くなったんだって」

 レイコは躊躇しながらも

 ユウカに語りかけた。

 「うん・・・・・」

 ユウカはうつむいて答えた。

 レイコはユウカの様子から

 それ以上のことは聞かなかった。

 ナオがレイコの手首が気になって

 いることにレイコは気がついていた。

 「ナオ、手首見たいんでしょ?」

 レイコはいたずらっぽく笑った。

 「うん・・・・・まあ」

 「ほら、どうぞ」

 レイコは手首を見せた。

 前回からキズは増えて

 いなかった。

 続く。

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Posted by 蘭  at 12:05

2009年02月25日

第一章第49回


 数日後にナオとユウカは宮下公園で

 待ち合わせをした。

 ユウカはナオを見つけると、

 力なく笑った。

 やはり自分の彼氏の死は

 相当なショックなのだ。

 ナオはあらためて傷心の

 ユウカの気持ちを推し量った。

 「ユウカ、行こう」

 ナオはこういう時こそ自分が

 リーダーシップを発揮しな

 ければと思った。

 レイコの家につくまでの電車の

 車内でユウカは浮かぬ表情だった。

 ユウカの物憂げな横顔を見ながら、

 レイコに会うことでユウカが少しでも

 元気を取り戻してくれたら。

 ナオはそう願わずには

 いられなかった。

 2人はレイコの家についた。

 玄関のチャイムを鳴らす。

 ドアを開けて出てきたレイコは

 前回会った時よりも元気そうだった。

 ナオは思わず、レイコの手首に

 目をやってしまった。

 続く。

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Posted by 蘭  at 13:05

2009年02月24日

第一章第48回


 葬儀から一週間が過ぎた。

 ナオはユウカのことが

 気になって仕方がなかった。

 ナオはケータイを取り出し、

 電話帳の画面を見ていた。

 しばらく迷っていたが、

 メールではなく直接

 電話で話してみることにした。

 発信音が何度が鳴ったあと、

 聞きなれた声がした。

 「ハイ」

 ユウカの力ない声が聞こえた。

 「ユウカ?ナオだよ」

 「ああ」

 ナオはユウカに自分の気持ちを

 どう伝えたらいいか迷った。

 しばらく話をしたあとにナオは、

 ふとレイコのことが頭に浮かんだ。

 そうだ、ユウカといっしょにレイコに

 会いにいこう。

 ナオはさっそくこのアイデアを

 ユウカに提案してみた。

 ユウカは少し考えていたが、

 レイコ宅を訪問することに

 同意してくれた。

 続く。

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Posted by 蘭  at 12:54

2009年02月23日

第一章第47回


 しばらく泣き続けた後、ユウカは静かに

 立ち上がった。

 「ユウカ、大丈夫?」

 ナオが声をかけた。

 「うん」

 ユウカは力なく答えた。

 ナオは詳しい事情は

 あとで聞くことにした。

 

 ソウのお葬式は2日後に

 とりおこなわれることとなった。

 ナオはユウカが心配だったが、

 参列は控えることにした。

 彼は町の不良グループと

 激しい口論になり、

 刺されて死んだのだった。

 ナオはユウカの心情を考えると、

 心が痛み、胸が締め付けられる

 ような気がするのだった。

 続く。

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2009年02月21日

第一章第46回


 ドクターは沈痛な面持ちでユウカの

 顔を見た。

 そして一瞬の間をおいてこう答えた。

 「お気の毒ですが」

 その声を聞いた瞬間、ユウカはわっと

 叫んで、床にしゃがみこんだ。

 ソウは助からなかったのだ。

 泣きじゃくるユウカを前に、ナオは

 どうすることもできない自分が

 もどかしかった。

 ユウカは泣き続けるばかりなので、

 ナオはひざをかがめてユウカの

 肩に手をやった。

 「ウソ、ウソだよ、死んだなんて」

 ユウカは泣きながら首をふって、

 彼氏の死を信じまいとしていた。

 ユウカの肩を抱きながら、なんと

 声をかけたらよいのか、

 とまどうばかりのナオだった。

 続く。

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2009年02月20日

第一章第45回


 ナオの肩に顔をうずめて、ユウカは

 泣きじゃくるばかりだった。

 「ユウカ、どうしたの?説明してよ」

 ナオはなぜソウが刺されたのか、

 詳しい事情を知りたかった。

 しばらく泣くと、ユウカは落ち着きを

 取り戻した様子だった。

 ユウカの説明によると、2人でカラオケボックス

 へ行き、外へ出た時にヤンキーに

 からまれたそうだ。

 ソウとヤンキーたちは激しい口論になり、

 最後は乱闘になってソウは刺された。

 事情を知り、ナオはユウカに告げた。

 「とにかく回復することを祈ろう。ねっ」

 ナオにそう慰められると、ユウカは静かに

 うなずいた。

 手術は大変な大手術だった。

 2人にとっては、おそろしく長い時間に

 感じられた。

 ようやく手術中のランプが消えた。

 手術室から出てきたドクターは

 暗い顔をしていた。

 ユウカはあわてて駆け寄り、

 ドクターに尋ねた。

 「先生、どうだったんですか?」と。

 続く。

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2009年02月19日

第一章第44回


 ナオの乗ったタクシーは、やっと

 病院にたどりついた。

 ナオは料金を払う時間も

 もどかしかった。

 ユウカがどうしているか気になって

 仕方がなかった。

 ナオは病院の受付で病室を尋ねた。

 「その患者さんだったら、集中治療室で

 緊急手術中です」

 ナオはあわてて病院の廊下を走り、

 教えてもらった病室へと向かった。

 病室の近くへ行くと、見慣れた顔

 が見えた。

 ユウカだった。

 ユウカはナオの顔を見ると、

 ワァッと叫び、涙を流しながら

 ナオに抱きついてきたのだった。

 続く。

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2009年02月18日

第一章第43回


 ナオはユウカに向かって叫んだ。

 「ユウカ、今どこ!」

 「今、歌舞伎町だよ、ナオすぐ来て!」

 ユウカの声は切迫感に満ちていた。

 「今すぐ行くから。歌舞伎町のどこ?」

 ユウカは居場所を答えた。

 ナオは翔と会った幸福感から

 一転、緊張を感じながら電車に乗った。

 途中で山手線に乗り換え、新宿駅

 へと向かうナオ。

 ナオはしばらく避けていたユウカが

 やはり自分にとって大事な友人だ

 と再確認していた。

 新宿駅から歌舞伎町方面に

 小走りに走る。

 ユウカが教えてくれたのは、

 こま劇場のそばだった。

 指定された場所についたが、ユウカの姿は

 見当たらなかった。

 ナオはもう1度ケータイでユウカに

 連絡をとってみた。

 「ユウカ、今どこにいるの?」

 「救急車で病院に着いたところ。

 すぐ来て」

 ユウカは新宿の救急病院の

 名前を教えてくれた。

 ナオはタクシーを利用して

 病院に向かうのだった。

 続く。

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Posted by 蘭  at 13:50

2009年02月17日

第一章第42回


 ナオはその最後の切符を買ってみたい

 と思った。

 「また会いましょう」

 翔とメールアドレスを交換し、

 ケータイの番号も教えた。

 ナオはなんとなく自分も

 芸術家のはいくれになれた

 ような気がした。

 「また連絡します」

 翔はさわやかにナオに

 語りかけた。

 「じゃあ、わたしはこれで」

 ナオは翔にそう告げると、

 帰路についた。

 帰り道に、ナオは久しぶりに

 明るい気持ちになれた。

 自分が新しい世界に一歩

 踏み出したような気がしていたのだ。

 その時、ケータイ電話が鳴った。

 ナオがバッグから真っ赤なケータイを出し、

 画面を見ると相手はユウカだった。

 ナオは何か胸騒ぎがした。

 「ハイ」

 ボタンを押しケータイに出ると、

 ユウカの切迫した声が聞こえてきた。

 「ナオ、助けて!ソウが刺されちゃった」

 ナオは顔面から血の気が引いていくのを

 感じていた。

 続く。

 きのうはお休みしてしまって、申し訳ありませんでした。きょうからまたがんばります。

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Posted by 蘭  at 13:49

2009年02月14日

第一章第41回


 ケンの顔が脳裏に浮かぶと、ナオは

 一瞬恐怖心を感じた。

 ケンのあのすさまじい暴力は

 ナオをすくませた。

 しかし、目の前で微笑んでいる

 翔の優しさはナオにとって魅力的だった。

 「また会うことできる?」

 翔はナオに語りかけた。

 ナオは一瞬ちゅうちょした。

 しかし、意を決して彼女は答えた。

 「ハイ。会えます」

 ナオにとっては新しい世界への

 旅立ちのような気がした。

 美大生、芸術、現代アート。

 すべてが未知の領域だった。

 しかし今のナオにとっては、

 それが渋谷という地獄、渋谷という

 哀しみの街からの脱出の

 最終切符のような気がして

 ならなかったのだ。

 続く。

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Posted by 蘭  at 12:59

 翔はギャラリーの中をいろいろと

 案内して解説をしてくれた。

 ナオは夢見心地だった。

 現代アートの作品にも心ひかれたが、

 何より翔といっしょにいられるのが

 うれしかった。

 翔は自身の作品についても

 解説してくれた。

 すてきなデザインのイスだった。

 翔は都内の美大に通っていた。

 ナオにとっては美大というのは

 今まで別世界だった。

 しかし翔の話を聞いている内、

 芸術の世界にも関心がわいてきた。

 ナオは翔といつまでもいっしょに

 いたいと感じた。

 しかし、その時ナオの脳裏には

 ケンの顔が浮かんできた。

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Posted by 蘭  at 11:12

 ナオは相手の美青年の顔をマジマジと

 見つめた。

 彼は自己紹介をした。

 「翔(ショウ)と申します。出品させてもらってます」

 ショウは涼しい眼で、ナオを見た。

 ナオはこんな澄んだ瞳の青年に会うのは、

 初めてだと感じた。

 ナオのまわりにいる若者たちは、

 濁った目をした者ばかりだ。

 「今美大に通ってます」

 ショウはさらに自分のことを語った。

 「学生さんですか?」

 彼はナオのことも聞いてきた。

 「ハイ、高校生です」

 「へ~、大学生かと思った。

 大人びてるから。」

 ショウは微笑んだ。

 そんな彼のさわやかな笑顔を見て、

 ナオの顔にも笑顔がこぼれた。

 続く。

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Posted by 蘭  at 11:49